「食欲がないけどお腹が空く」はなぜ?その理由と対策法

あまり食欲はないのだけれど、なぜかお腹は空いている、という感覚を味わった経験はありませんか。
なぜそのようなことが起こるのか、そして、そのようなときには、どのような対応をしたらいいのかを説明します。

食欲がないときにお腹がすくのはなぜ?

食欲と空腹を感じる感覚は、それぞれ異なるメカニズムで制御されています。

私たちの食欲は脳の視床下部でコントロールされています。
空腹感を感じさせているのは摂食中枢と呼ばれるもので、満腹感を感じさせているのは満腹中枢と呼ばれるものです。

人間は生命を維持するために、食べ物から栄養を摂り、エネルギーを得なくてはなりません。
そのため、胃の中に食べ物がない空腹状態になると、胃から脳の視床下部に情報が伝わり、摂食中枢の働きが強くなり、「食べたい」という欲求を生じさせます。
これがいわゆる食欲です。

一方、空腹感は、胃の中に存在する胃液などの消化液や酵素が、食べ物を分解するために働き始めることによって生じます。
胃の中が空になると、胃壁の筋肉が収縮し物理的に空間ができますが、できた空間に対して生じるものが空腹感です。

そのため、食欲がないときでもお腹が空くのは、胃が空になって空間ができたため、なのですが、食べ物の消化吸収は、自律神経の副交感神経が優位な状態のときに働きます。

ここで少し自律神経について説明します。自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があります。

交感神経は、ストレス反応や興奮状態に関連して活発に働くものです。
交感神経は、心拍数や呼吸の増加、血圧や血糖値の上昇などの身体的反応が引き起こし、心身が危機的状況に置かれたときに活動できる仕組みになっています。

一方、副交感神経は、リラックス状態や休息状態に関連して活発に働きます。
これにより心拍数や呼吸数の減少、血圧の低下、消化器活動の増加などの身体反応が引き起こされます。
副交感神経の活動は、身体がリラックスし、回復するために必要な状態に切り替えることを可能にします。

人間はこれらのバランスが保たれることで、心身共に健全な状態で過ごすことができています。

通常の状態であれば、先に述べた、胃が空になって空間ができた時点で、食欲と空腹感に従い、副交感神経が優位になり、食事を摂る、といった行動に繋がる訳ですが、ストレスなどで副交感神経ではなく、交感神経の方が過度に刺激されている状態のときには、空腹なのに食欲はわかない、ということが起こります。

ストレスとは、外部からの刺激を受けたときに起こる緊張状態を指しますが、ちょっとした悩み事や不安に思っていること、仕事などの人間関係、身辺の些細な変化がストレス源となるだけでなく、睡眠不足による不規則な生活、バランスを欠いた不摂生な食事、運動不足なども自律神経のバランスを乱す原因となります。

対人的なストレスを軽減させることは難しい場合もありますが、まずはしっかりと睡眠をとり、規則正しい生活を送ること、また、適度な運動を行い、栄養バランスの良い食事を摂り、交感神経が活発に働き過ぎている状態から、少し副交感神経が優位になる状態を長く保てるようにしていくことが大切です。

食欲がないときに試したい食材の組み合わせ

食欲がないときに試したい食材の組み合わせに関しては、消化が良いものを摂る、という考え方と、食欲を刺激する食材を組み合わせて摂る、という2通りの考え方があります。

1つ目の考え方の、消化が良いものを摂る、というのは、身体が消化吸収する際になるべく胃や腸への負担の少ない食品、を指します。

例えば、喉越しの良いうどんやそうめん、お粥、雑炊、スープ、茶碗蒸しなど。
また、冷たいものの方がさっぱりと感じるので、豆腐やプリン、ヨーグルト、ゼリーなども、食べる際に固くなく、食べやすい点もおすすめです。
市販品などでいつでも用意しておくことができることも良いですね。
香りが控えめなことも考慮されています。

2つ目の考え方は、上記と真逆なものです。
刺激の強めな食材を摂ると食欲を刺激する、との考えから、以下のような食材をご紹介します。

①生姜とレモン
生姜の消化促進作用と、レモンに含まれるビタミンCの持つ胃液分泌促進作用を組み合わせる、というものです。
熱湯にすりおろした生姜の搾り汁とレモンの果汁を合わせ、はちみつを加えるドリンクがおすすめです。

②ドライフルーツ
ドライフルーツに含まれる天然の糖分は、視床下部の直接の栄養となるため、食欲をわかせる働きがあると言われています。
ヨーグルトと併せて摂ると、タンパク質も補填できるので、胃への負担も軽減できます。

③キムチ
キムチ特有の香りと辛味は食欲を刺激します。
更にキムチには乳酸菌が豊富に含まれており、腸内環境を整える作用があります。

身体への負担を考えると、空腹の時間が長かった場合は前者が、空腹の時間がそこまで長くなかった場合は後者が、食欲をわかせるために効果的なアプローチではないかと思われます。
とはいえ、食欲の減退が進んでいるときには、自分が好きなものや食べやすいものを選んで、まずは食事を摂ることを優先に考えましょう。

食欲がないときでも栄養バランスを整える方法

食欲がないときでも、栄養バランスを整える方法です。

①汁物を飲む
食欲がない時は、汁物を飲むことをおすすめします。
野菜などを中心にとった出汁だけでもいいですが、その中に野菜や豆腐、きのこ類など消化吸収の良い食材を加えると、胃腸への負担も少なく、栄養価が上がります。
暖かい飲み物は身体を温め、消化を促進するため、可能なら温かいものを摂る方が、食欲がないときには特に効果的です。

②食べやすい食材を選ぶ
食欲がないときは、味や食感が敏感になっています。そのため、食べやすい食材選びが肝心です。
ご飯やおかゆ、豆腐やヨーグルトなどは先にも上がっていましたが、ぶどうやももといった果物も、口当たりが優しく、消化吸収も良いのでおすすめです。

③栄養バランスの良い食事を摂る
食欲がないという状態は、ストレスを感じるコンディションであるということです。
そこで栄養バランスを考慮すると、トリプトファンやビタミンB6、鉄、亜鉛といった栄養素を積極的に摂り、セレトニンの生成を促す食材を摂ると効果的です。

具体的には、

トリプトファンは、卵や大豆製品、乳製品、かつお節
ビタミンB6は、赤身肉、赤身魚、赤パプリカ、ニンニク、バナナ
は、レバー、赤身肉、赤身魚、卵黄、貝類、豆類、緑黄色野菜
亜鉛は、牡蠣、豚レバー、卵黄、煮干し、チーズ、ココア

などに多く含まれています。

重複しているものも多いので、卵や赤身肉、赤身魚、豆類などを中心に、野菜類も組み合わせ、バランスの良い食事を心がけましょう。

 

まとめ

色々とおすすめの食材をご紹介してきましたが、食欲は感覚情報の影響を強く受けるので、食べ物だけでなく、見た目の美しいもの、モチベーションの上がるものを見たり、食欲をそそる効果を期待できる香りを嗅ぐのもおすすめです。

綺麗な景色を見たり、好きな絵を眺めてみたり。
お茶ならば、ハーブティーや麦茶など、ノンカフェインのものがおすすめです。
夜寝る前に、香りで心を落ち着かせてから布団に入るのもよいでしょう。

生活のリズムが整わず、不規則な生活習慣を見直したいと考えている方や、気持ちもリラックスして眠りにつきたいと考えている方は、一度お試しになってみてはいかがでしょうか。
健やかな日々を手に入れるきっかけを、一杯のお茶から得られたらいいですね。

※本記事は管理栄養士監修のもと作成しております



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